寮長 信田 智
昨今、東京は記録的な乾燥注意報が出されていると聞く。しかし新潟の空は雪雲に覆われ、日照時間が極めて少ない。地球規模でも、地震・津波・台風・原発事故・干ばつ・豪雨・熱暑・寒波と地球環境が大きく変動しているのを感じる。昨年の3・11東日本大震災は、わたし達の生活のあり方を、大きく考え直さなければならない出来事となった。
いろいろな事情で昨年7名の寮生が寮を去っていった。大切なお子様をお預りし、寮担任を中心にスタッフ一同、精一杯関わってきたつもりであったが、なお力及ばなかった。本人の事、親御さんのことを思うと、1月の新潟の空と同じように、わたしの心はなかなか晴れない。
さて、皆さんは宗教をどのように思っているだろうか。宗教は弱い人間の神頼み、困った時の神頼みに過ぎないと思っていないだろうか。それはそれで一理あるかも知れない。しかし、聖書で信仰の父と言われたアブラハムという人物は、神の語りかけを聞いたとき、家族、財産、生命の危険を省みず、行き先を知らずに神の示す地に出て行った。見える形で私たちを守ってくれる安住の地にいるのではなく、神のチャレンジに自分の人生を賭けたのです。
敬和学園初代校長太田先生も、日本聖書神学校で次期校長になり、牧師養成という大事な働きがあったにもかかわらず、影も形も無い、出来るか出来ないかさえ分らない、キリスト教学校の設立のために全てを投げ打って新潟に出てこられたのです。その他多くのクリスチャン達、また私たち自身にしても、信仰はまさに命がけの大冒険だったのではないでしょうか。望み得ないときになお、望みて信じ、神様の約束に自分の人生を賭けたのです。
被災地の復興は未だ遅々としてはかどらない。今なお多くの方々が、その苦しみの中に身を置いて闘っておられる。原発事故においては、人間の傲慢と過信により、どれだけ多くの方々が、これから先なお何十年と苦しまなければならないかを思うと、先の見えない暗黒の中で不安が募ってくる。
今私たちを取り巻く現実は、様々なところで暗澹たる状況になっている。信仰があってもなくてもその現実は変わらない。しかし、その現実の中でどのように生きるかは、人それぞれによって違う。黒き雲の上には、今も燦然と輝く太陽があり、そこには青空が広がっている。心を高く上げ、そこに目を留め、希望を持って前進したい。
寮生リレー通信 (第 93 回)
【 光風館 】
「レベルアップに繋がった寮クリスマス」
I.H.(1年生:新潟県三条市)
僕たち1年生にのぞみ寮クリスマスの飾り付けの話がきた時、僕も含め「面倒くさい」と感じた人の方が多かったと思います。1回目の話し合いが行われた時、僕は正直「だるい」という気持ちが心の中にありました。1回目の話し合いは、僕が見る限りですが、積極的に意見を言う人もいれば、話し合いにあまり参加しない人もいたし、寝ている人もいて、「最初はこんなものかな」と思いましたが、みんなの気持ちはバラバラだと感じました。しかし、2回目、3回目と話し合いを重ねていくうちに、みんなが話し合いにきちんと参加するようになり、光風館の1年生で作る物も決まりました。それは、“雷門”と“東京ドーム”になりました。そこから、光風館の1年生を2チームに分けて、飾り付けの準備が始まりました。みんなふざける事もあったけど、自分のやるべき仕事をきちんとやっていて、作業もスムーズに進みました。作業を通して、普段あまり話しをしない人とも話す事ができたりして、自然とコミュニケーションを取る事も増え、みんなで楽しく作業ができました。多少の問題もみんなの力を合わせて乗り越えることが出来ました。この事から、やっぱりみんなで協力した方が楽しいし、助け合うということが大事だという事ことも再確認することができました。そして、飾りを完成させることができました。
寮クリスマスの前日に、友愛館に飾りを持っていき、光風館の場所に飾りつけをしました。他の館はどこもとてもレベルが高くて驚きました。やっぱり女子寮はとても完成度が高く、凄いと感じました。しかし、僕は見た目も確かに大切だと思うけど、本当に大切なのは一生懸命になって飾り付けに取り組む姿勢だと思いました。確かに僕たちの飾り付けはズバ抜けて凄い作品ではなかったけど、完成に至るまでの時間、みんなで楽しく準備したり、時には真剣に取り組んだりと一生懸命にできたと思います。僕たちは、ほんの少しだけどレベルアップ出来たと思います。そして、これから行われる行事のひとつひとつに真剣に取り組んで、また少しずつレベルアップしていきたいです。初めての寮クリスマスはとても楽しい思い出ができました。
【 大望館 】
「寮クリスマスを思い返して」
H.S.(1年生:新潟県燕市)
去る12月10日、僕は初めて寮クリスマスを経験しました。御馳走を食べたり、各館の団結力を試すゲームをしてみんなで盛り上がれる楽しい行事でした。しかし、楽しいだけではなくきっちりと「礼拝」もしました。今回はその事をお話しさせてもらいます。
礼拝は学校のチャペルで行われました。夜にチャペルで礼拝をすることはなかなか無いので、毎朝のチャペルとは違った雰囲気で不思議でした。進行はいつもの礼拝と同じでしたが、讃美歌を歌うことが好きな人の集まりである「のぞみコール」という集まりが聖歌隊として讃美歌を歌っていました。僕も参加させてもらったのですが、とても良いハーモニーで心地よかったです。
一番印象に残ったのがゲストの方のお話です。その方は東日本大震災が起きてからずっと継続的にボランティアを続けていられる方で、こんな事を言っていました。
「メディア等で大震災の事を報道しなくなっても、被災地はまだ大きい傷跡を残し、支援を必要としている」と。
僕は男子声楽部シュビドゥヴァーズに所属しており、冬休みには被災地である宮城県の七ヶ浜町にて被災支援労作に参加させてもらいました。数か所に渡り訪問して演奏等させてもらいましたが、そこで出会った人々や、現地の様子は隠しきれない傷跡を抱えているようでした。現地のボランティアセンターでは、途方も無い量の作業に対して「コツコツやるしかない」とも言っていました。僕はほんの3日間お手伝いをしただけですが、とても大変でした。そんな仕事をずっと続けられる人は、本当にすごいです。
この礼拝で感じた事と僕が被災地で感じた事をしっかり覚えていたいと思います。
【 めぐみ館 】
「寮クリスマスを終えて・・・」
Y.R.(2年生:新潟市中央区)
12月10日にのぞみ寮でクリスマス会が行われました。寮クリスマスでは、館対抗で行事委員が考えてくれたゲームをしました。ゲームは、イントロクイズ、○×クイズ、パズルを作るゲームがありました。これらのゲームは、すべて4つの館が対抗して行われました。その中で、私が一番楽しかったゲームは、パズルを作るゲームです。これは、最後に行われ、前のゲームでの総合点数で、順位によって色が分けられピースの数決められていました。私たちめぐみ館は1位で通過し、ピースの数が一番少なかったからか、最初に完成することができました。のぞみ寮のテーマである「One piece」という4つに分けられたパズルがそれぞれ体育館全面にごちゃまぜにされて数百個用意されたダミーの中から4つのピースを探し出し完成させるものです。これは、みんなで協力したから、すぐに終わったように感じました。1人で探したら、手に負えないほどの量だったとおもいます。景品は、大きな箱から小さな箱が4つ用意されていて、私たちは一番大きな箱をめぐみ館全員で選びました。中身は、ティッシュとノートで、他の館はすべて飲食物でした。大きくて重ければいいとは限らないと痛感しました。また、協力と言うのは大切でチームワークや、信頼が必要だなと思いました。
【 みぎわ館 】
「敬和!ありがとう!」
K.S.(3年生:茨城県下妻市)
私が敬和に入学してから、もう3年が経とうとしています。本当にあっという間でした。いろいろな事がありました。1年生の頃は敬和が嫌で、口癖は「死にたい」「家に帰りたい」でした。よく泣いていて、学校でも寮でもあまり人に心を開くことが出来ずに過ごしていました。
2年生になり、学校に行くことが嫌になり、よく授業を休んだりして毎日先生に怒られ、それに反抗していた日々。今では考えられない事ですが、2年生の秋までは敬和に背を向け、「嫌いだ!」と思い続けていました。
そして3年生になり、卒業を間近に控えた今、私は敬和がとても大好きになっています。みんなに心を開かずに殻に閉じこもっていた私にも、ここではみんながそばに居続けてくれました。支え続けてくれました。私の事を考えてくれていました。とても幸せだと思います。
真っ赤なスウェットを着続けていたおかしかった日々、部屋替えの時に目が腫れるまで泣いたあの日、みんなで花火を見た夜、いたずらをして喜んだ日々、42回生のミーティングでみんなで泣きながら語り合った日々、私と何人の人がケンカをし仲直りをしてどれだけ心の結びつきを強めてきたことか…。思い出すときりがありません。全てが幸せな思い出です。
こんなに素敵な記憶がたくさんあるのは敬和に入学して、のぞみ寮に入寮して、ここでみんなと出会えたからです。私の敬和ライフはたくさんの人に愛され、最高の物になりました。あまり勉強は得意になれませんでしたが、私の心はここでとても成長したと思えます。敬和での出会いは一生モノです。普通ではありえない出会いがいっぱいです。今、私は敬和にいられて、みんなに巡り会えて幸せです。そして、みぎわのみんなに向ける私の愛は無限大です。3年間、本当にありがとう。
【 スタッフから一言 】
2012年がスタートし、もう早1ヶ月が経とうとしています。3年生の修了が目前に迫り、学年問わず、残りの時間を大切に有意義に過ごそうとしている様子が見られます。各館で始まった3年生によるラストメッセージ。どの寮生も、自分や家族や友達などと徐々に向き合えるようになった事、苦しい事を泣きながらでも乗り越えてきた事、そこから周りの支えや愛情を知り、自分らしく歩めるようになった事を実感しています。のぞみ寮生の大きな大きな心の成長をはっきりと確認でき、幸せこの上ありません。保護者の方々には、お子様の大切な3年間をのぞみ寮に託して下さり、信頼し、支え続けてくださっている事、本当に感謝申し上げます。
2012年も、みんなが元気で大きく成長していくことを祈りながら、寮スタッフ一丸となって寮教育に取り組んでいきたいと思います。本年も、どうぞよろしくお願いいたします。
みぎわ館担任:森口みち子