寮長 信田 智
現代のコミュニケーションの手段として、ケイタイ、パソコンといった電子機器が大きな役割を果たしていることは言うまでもない。それらは、リアルタイムで大量の情報をやり取りすることも出来る。しかし、機器を媒介としたコミュニケーションでは、相手の表情や感情の動きを読み取る事が難しい。そのため、顔と顔を合わせてする対話では、絶対に言わないような激しい言葉や、卑猥な言葉がネット上で飛び交う。その結果、しばしばトラブルに巻き込まれたり、人を傷つけたりする事が起こる。また、悪意のあるネット上の書き込みにより、いわれのない屈辱を受け、苦しみ、死に追い込まれる事さえ起きる。恐ろしい事に、それらが遊び感覚で行われている事である。
更に、自らの技術を悪用して、他人のパソコンに侵入し、リモートコントロールで、大切な情報を抜き取ったり、無差別殺人予告を書き込んだり、公共施設に爆弾を仕掛けたとの書き込みをしたり、極めて悪質な反社会的行為を平気で行える感覚になってしまう。それは、心を持たないコンピュータゲームの世界の出来事を、血が通い心が通い合う、生きた人間世界の出来事と同じであると錯覚させてしまうのかも知れない。まさに、神無き教育のなせる業であり、「知恵ある悪魔を作り出している」結果なのかもしれない。
私の息子は、大学院を出て上場企業のコンピュータ会社に勤めたが、近くにいる人との仕事の打ち合わせまでもチャットで行われるような、あまりにもコンピュータ付けの生活が性に合わず、こんな事をしていては人間がおかしくなると感じて退職をし、ベンチャー企業の訪問看護のマネージャー職についた。そこには、人と人とのコミュニケーションによってもたらされる仕事の成果がある。(最近になってその企業も軌道に乗り、やっと普通の給料をもらえるようになったと言っていた。)
一方、のぞみ寮では、これだけ情報機器の発達した時代、未だに携帯電話の持込が禁止されている。パソコンも自由に使えない。親や友人との連絡は、基本的に公衆電話によっている。とても不便で不自由である。その不便さに親のほうが辛抱しきれず、子供の言いなりになり、ケイタイを持ち込ませてしまうことさえある。のぞみ寮は、ケイタイやパソコンでは出来ない、豊かな生きたコミュニケーション能力を身に付ける大切な場です。顔と顔を相い合わせて、お互いの表情や、感情を感じながら対話することが求められます。ある意味、とてもしんどい作業です。それだけに、保護者の方のご理解、お支えも必要です。
しかし、そのしんどい作業こそが、豊かなコミュニケーション能力を養っていくのです。ある時期徹底的に、不自由さと不便さの中に身を置く事によって、不自由さの中で、本当の自由とは何か。不便さの中で、本当の豊かさとは何か。というものを見つけて行きます。更に、しんどさの中で忍耐力と工夫が生れます。まさに、人間形成の大切な基礎が培われて行くのです。のぞみ寮生は、日常生活の中でお互いの違いを認め、その存在を大切にし合いながら、コミュニケーション能力を高めています。
< 寮生リレー通信 (第 100 回) >
≪光風館ブロック長≫
「Only One 光風~お金で買えない価値がある~」
K.K(光風館 2年:福島県会津若松市)
みなさん、こんばんは。新運営委員長になりました、光風館のK.Kです。今年ののぞみ寮のテーマは各館のブロック長、副ブロック長で話し合いを重ね、各委員会の委員長のアイデアも加えて館生しました。今年のテーマは、
の んきな家族だ みぎわ館
ぞ っとさせるぜ 光風館
み んな好きでしょ? 大望館
り ズムに乗るぜ めぐみ館
ょ んかんそろえば
う ぃーあーHappy!! です。
このテーマは説明がいらないほどストレートな意味を持っているのではないでしょうか。
テーマを決めるための話し合いの中で、ブロック長、副ブロック長に今後自分たちがどのような寮生活を送っていきたいかという思いを話してもらいました。僕がこの話し合いの中でとても重要だと思った言葉があります。それは「居心地の良い場所」という言葉です。みなさんは居心地良く寮生活を送れていますか?寮には様々なルールがありますが、家と変わらない場所ですよね。家は居心地の良い場所であるはずです。
これからの1年間は「居心地の良い場所」という言葉をキーワードに寮生活を送っていきましょう。
次に光風館です。今年の光風館のテーマは「Only One 光風~お金で買えない価値がある~」です。このテーマには、光風にいる時にしかできないとても価値のあることを経験していこう、という思いが込められています。また、光風でしか作り出せないものを見つけていこうという意味も込められています。これから1年間、その思いを胸に寮生活を送っていきたいです。
≪みぎわ館ブロック長≫
「No trust No family ~陽だまりに咲く姉妹(はな)~」
K.K(みぎわ館 2年 :新潟市中央区)
このたび、みぎわ館新ブロック長になりました、K.Kです。突然ですが、みなさんはみぎわ館と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか。恐らく、みぎわ館に住んでいる人と、住んでいない人とでは、受ける印象はだいぶ異なると思いますが、私は良い意味でも悪い意味でものんびりしていると思います。姉妹のような、友達のような、毎日さわがしい館です。
しかし、ただの仲間止まりではなく、今年はもう一段階上を目指したいと思います。そんなみぎわ館のテーマは「No trust No family ~陽だまりに咲く姉妹(はな)~」です。このテーマは、44回生で3日間徹夜し、45回生にも協力してもらって考えた自信作であり、大事なテーマです。「No trust No family」は、「No pain No gain(痛みなくして得るものなし)」という英語をもじってつくりました。信頼なくして家族なし、という意味です。1、2年生ミーティングで、どんな館にしたいか、というなんとも抽象的な質問をして、みんなにアイデアを出してもらいました。すると、“あったかい”“家族”“安心する”“ほっとする”など多くの意見が出たにもかかわらず、本質的な部分はみんな一緒だった、というおどろきの結果が出ました。学校から帰ってきて、玄関に入った瞬間にほっとする、というのが一番しっくりくるかと思います。
また、サブタイトルに用いている“陽だまり”には、陽のあたっている場所のなかでもとりわけあたたかいところ、というような意味があります。
みぎわ館生にとって、みぎわ館をとりわけあたたかい、家族の集まる家のような館にしていこう、という気持ちをこめたテーマです。みぎわ館から、今以上にやさしいオーラが出てくる日も、そう遠くないかもしれません。どうぞご期待ください。
≪大望館ブロック長≫
「ヤルときゃヤルぜ大望館!~Boys be happy and earnest~」
N.R(大望館 2年 :兵庫県姫路市)
大望館新ブロック長になりました、N.Rです。さて、現在大望館は皆さんご存知の通り、大変大変にぎやかな館です。特に44回生のにぎやかな様は尋常じゃありません。例えば、友愛館での朝ごはん。どの館も多くの人が寝起きの元気のない顔でご飯を食べているのに、大望館44回生だけは元気。朝から寮長先生に怒られるほどです。
さらに一時期、44回生は平日のランチも一緒に食べていました。通生もいる中で、僕らだけ異様なまでの盛り上がりを見せていました。先生に注意される事も多々あります。ブロック長として申し訳ないと思う反面、それはマイナスな事ばかりではないと思います。騒がしいというのも見方を変えれば元気だということ。にぎやかというのも仲が良くなければできないこと。 実際、大望館は他のどこの館にも負けず、元気で仲が良いです。僕自身そんな仲間たちと共に日々を過ごせることを幸せに思っています。そんな僕たちが考えた大望館新テーマは、「ヤルときゃヤルぜ大望館!~Boys be ばっぺるぴん~」です。
今までは何も考えず騒ぎ散らしてきた大望館44回生も、世代交代をして館を引っ張っていく立場となりました。そうなってはいつまでもただ騒ぐだけではいけません。やるときはちゃんとやる。そうでない時には好きなだけ騒ぐ。そんなメリハリをつけられる学年、そしてそういう館にしていきたい、という願いをこのテーマに込めました。大望館がどういう成長を見せてくれるのか、どうぞ楽しみにしていてください。
≪めぐみ館ブロック長≫
「しあわせの五線譜
~奏でようめぐみのハーモニー 作ろうみんなの笑顔~」
Y.A(めぐみ館 2年 :神奈川県中郡大磯町)
めぐみ館新ブロック長になりました、Y.Aです。私たちめぐみ館44回生は、ミーティングを重ね、話し合いの末、テーマを決定しました。めぐみ館の新テーマは「しあわせの五線譜~奏でようめぐみのハーモニー 作ろうみんなの笑顔~」です。これには絆、協力、みんな違ってみんないいなどの意味をもち、実にめぐみ館らしいテーマに仕上がったと思います。
このテーマで一番大切なのは「奏でようめぐみのハーモニー」というフレーズです。「五線譜」はめぐみ館を表していて、たくさんの音符=めぐみのみんなが集まってハーモニーを奏でよう、めぐみ館つくろう、めぐみらしさを出していこうという意味が込められています。めぐみらしいハーモニーを奏でるためには、ひとりひとりを大切にし、お互いを認め合い、全員が1つとなって協力する必要があります。それができるめぐみ館にこれからもしていきたいです。
また、めぐみ館には多くのルールがあります。しかし、そのルールをなんとなく守っているのでは意味がありません。だからと言ってルールに縛られ、物事に対して臨機応変に動けないのも違うと思います。なので、遊ぶ時は思う存分遊んでふざけていいけど、仕事やルールを守る時はしっかりとするという事をさらに追及していきたいです。
もう1つ大事な事があります。それは最低限のマナーをしっかりと守る事です。まずは挨拶。一応ルールとして女子寮の人や先生方とすれちがったときは挨拶をする、となっていますが、知っている人に挨拶をするのは常識です。
次に、「すみません、ありがとうございます」という御礼の言葉。これを何も考えず口先さけで言っているのでは全く意味がありません。御礼を言うときはちゃんと御礼の心を込めて言う。これも常識です。挨拶と御礼。この2つをぴしっとすることで、自然と生活態度も引き締まり、ルールもしっかりこなせるようになるのではないでしょうか。ルールはもちろんのこと、マナーがしっかりしている。そんなめぐみ館をつくっていきたいです。
のぞみ寮新運営委員長会 2012.10~2013.9
この10月より、各館の運営、ならびに「のぞみ寮」全体の運営を担ってきた3年生に代わり、2年生がその役を担うことになりました。各館で選出されたブロック長や各委員会の委員長で構成される「のぞみ寮」運営委員長会は、その1・2年生の代表組織です。【各委員会の目標】
礼拝委員 ― フレッシュ
生活規律委員 ― CHANGE the World ~チェックは愛の証です~
食事委員 ― すべての食材と調理師さんに感謝して、いただきます!!
~残さず食べろ~
整美委員 ― Clean with Heart
行事委員 ― 笑点~Enjoy, Happy and Smile~
リサイクル委員 ― 輝けゴミ箱!~ゴミ箱が輝けば、ぼくらも輝く~
【各館の目標】
大 望 館 : ヤルときゃヤルぜ大望館!~Boys be ばっぺるぴん~
みぎわ館 : No Trust, No Family ~陽だまりに咲く姉妹(はな)~
光 風 館 : Only One 光風 ~お金でかえない価値がある~
めぐみ館 : しあわせの五線譜
~奏でようめぐみのハーモニー 作ろうみんなの笑顔~
< スタッフから一言 >
今年も早いものでもう10月の半ばになりました。寮では世代交代が行われ、新運営委員会の働きがいよいよ本格的にはじまりました。この1年間のぞみ寮を引っ張ってくれた43回生、さらにその上の先輩方がつくってきたのぞみ寮の土台の上に、新運営委員会がどんな新しいのぞみ寮をつくってくれるのか、今から楽しみです!
不思議と、1年生が2年生に進級し、「先輩」と呼ばれるようになる時、2年生が最上級学年になる時、そして今回のように運営委員としての働きを担う時、それぞれ寮生は責任感からか、少し成長した頼もしい顔つきになります。
のぞみ寮で生活するひとりひとりには個性があって、得意・不得意も違います。だからこそ、互いに補い合い、高め合い、支え合い、それぞれに与えられる働きは違います。ひとりひとりのタラント(能力)を活かすことのできるのぞみ寮をつくっていってほしいと思います!
光風館 三浦 啓