「信じて待つ」
寮長 信田 智
「ある人が、どこかでボタンを掛け違い、嫁・姑の間に長年にわたる確執が生れてしまった。彼は息子の家族の名前を挙げ、その家庭に平和があり、自分たちとの間に和解の道が開かれるように日々祈り続けてきた。おそらく、良かれと思ってしていた配慮が、配慮ではなく、冷たい無関心のように伝わってしまったようです。
しかし、4年前の夏休みに息子が子供を連れて遊びに来た。その後毎年夏休に来るようになり、始めの2年は2泊3日、昨年と今年は3泊4日の滞在になった。そして、今年は息子の連れ合いが梅ジュースと、しそジュースを作ってくれた。また、梅のエキスを醗酵させ天然酵母を抽出し、天然酵母のパンも焼いてくれた。
さらに娘を送り出すに当たり、ジュースとパンに添えて「毎年夏休みに新潟から帰ってくる娘は、とても幸せそうな顔をして帰ってきます。今年もよろしくお願いします。」という内容の手紙をくれた。涙が出るほど嬉しかった。やがて顔と顔とを合せてまみえる日が来ることを信じ、楽しみに待っている」というのです。
寮生も様々な重荷を抱えながら寮生活をしていることであろう。その中でいろいろな問題を投げかけてくる。その時は、彼らの成長を信じて待ち続けていきたいと思う。たとえ、親も子も諦めたとしても、私たちはあきらめずに信じて祈って待ってやりたい。寮の教師達は本当に忍耐強く、諦めずに関わり続けてくれている。それによって支えられてきた親も生徒もたくさんいる。
私は寮生の顔写真を見ながら一人一人の名前をあげて、「彼らの霊性と健康と学びとが祝され、悪と誘惑、すべての災いから守られて、3年間の寮生活を全うする事が出来ますように」と祈っている。それでも3年間の寮生活を全うする事が出来なくて、様々な事情により途中で寮を去っていく子どもたちがいる。その親子と面談しながら、もったいないなぁ、なぜもう少し辛抱できないのだろうか、なぜ我々はこの困難を乗り越えることが出来なかったのだろうか、と残念な思いでたまらなくなってくる。
今、目に見えている現実は、辛く苦しい先の見えない不安だけかも知れない。しかし、私達教師は、その先に広がっている「もう一つの現実」に目を注ぎ、それを生徒と共有する事が出来るようにしていきたい。それは、忍耐して待つことを通して生れてくる信頼関係の中から見えてくるものであろう。さらに、教師にも親にも本人にも見えていない、もっと豊かな、「神が生きて働いておられる現実」があることに目を注ぎ、神様の備えておられる恵みに与ることができるように、信じて祈って待つ者でありたい。
「だから、自分の確信を捨ててはいけません。・・・神のみ心を行って約束されたものを受けるためには、忍耐が必要なのです。」(へブライ10:35-36)
寮生リレー通信 (第 106 回)
< 大望館 >
「海外教室」S.K(3年生:兵庫県西宮市) 海外教室では、カヤック、サンフランシスコ観光、カリフォルニア州にあるタホ湖でのクルージングなどいろいろなことを経験することができました。
その中でも一番楽しかったのがレイクタホでの三日間です。一日目は、レイクタホをクルージングしました。この湖は、とても大きくて驚きました。深い部分は紺色で、浅くなるとエメラルドグリーンみたいな色で、思わず「きれい」と言ってしまうほどでした。
二日目は、カヤックで友だちと競争したり、卓球やテニスなどスポーツをしました。二日目にビーチで見た夕暮れは今でも忘れられません。
最終日はバーベキューをして、肉をいっぱい食べてから帰りました。こうしてレイクタホでの三日間はあっという間に過ぎました。また、この海外教室ではホストファミリーのところへ泊まり、共に時間を過ごしました。その時間は今の自分にとってかけがえのないものになっています。私が大学生になったら、もう一度アメリカを訪れたいです。
< みぎわ館 >
「広島碑巡りの旅に参加して」
N.M(3年生:兵庫県姫路市) 敬和での最後の夏休みに広島に行こうと決めたのは、卒業生の先輩からの電話がきっかけでした。正直最初は、小学校の修学旅行で一度広島に行き、戦争や平和についてたくさん学んだことがあったので、それで十分だと考えていました。しかし、その先輩に誘われたことがきっかけで広島に行くべきか考えるようになりました。もしからしたらこれをきっかけに、新しい発見や出会いがあるかもしれないし、この先、社会学を学びたいと思っている私にとって、これは見聞を広げるチャンスなのかもしれないと思うようになり、参加しようと決めました。
実際に広島に行って私が感じたことは、小学生の時に広島を見て感じた時の気持ちよりも何倍も深く考えさせられたし、小学生の時から時間が経ち、成長した私がいるので、以前と今とでは感じることは全く違っていて当然でした。
私が特に印象的だったことは、被爆者の方からお話を聞かせて頂いたことでした。こういう機会はこれから先、減っていくはずですし、直接聞ける機会などきっと人生で数回しかない、もしかしたら今回が最初で最後かもしれない、そう思ったら、今私はこの場でとても貴重なお話を聞かせて頂けているということに気付き、自然と被爆者の方のお話を真剣に聞くことができました。そして私は、実は原爆の恐ろしさ、戦争がどれほど恐ろしいものなのかということを知っているつもりでいたけれど、それは戦争を体験していない私にとって知っているつもりになっていたに過ぎない…ということに気が付かされました。原爆が広島にもたらしたものは、当時の街が壊されたり、多くの命が奪われただけでなく、この機会に話してくださっている被爆者の方が何十年経っても忘れることのできない恐ろしい記憶として、一生この悲惨な出来事と闘い続けていかなければいけない、とんでもなく恐ろしいものであるということを、被爆者の方のお話を聞いて教えられました。
被爆者の方のお話以外にも、平和記念式典に参加したり、広島女学院の方に平和記念公園を案内してもらったり、原爆や戦争の恐ろしさを感じることができました。また、戦争をやっても何も良い事なんてない、恐怖や不幸ばかりなのだ、と改めて知らされました。これから先、証言者が減っていき、戦争を知らない子どもたちがもっと増えた時、今回広島に行って被爆者の方から直接お話を聞くことができた私が代わって伝えていきたい、伝えていかなければいけないと思います。
最初は参加するつもりではなかったのですが、先輩が参加のきっかけを作ってくれたおかげで、広島で戦争の事も自分の事も周りの事も世界に生きる人たちの事など、様々な事を考える機会が与えられました。私はこの夏休みに、少し成長できた気がします。何でも経験することが大事だということに改めて気付かされました。これから先私の人生の中で、きっと辛い事・苦しい事に出会う時があるはずです。でも今回の経験を通して、すべてが恵み、すべてがチャンスだと思って何事にも逃げないように向き合っていきたいと思いました。
ヒロシマで学んだ事をこれから先も忘れずに、残りの敬和生活を一日一日しっかり過ごしていこうと思います。
< 光風館 >
「2年生合宿」
K.K(2年生:長野県長野市)
今回、僕たち光風館45回生の2年生合宿は、掃除、ボーリング、焼き肉、温泉という内容で行いました。とにかく、今回の2年生合宿を一言で言うなら「楽しかった」だと思います。2年生全員が楽しんでいたなぁと感じたし、自分もとても楽しみました。
ボーリングでは、スコア1位を競い、生徒と先生の壮絶な戦いがあり、結局、先生がスコア1位を取ってしまい、景品の光風館ショップ300円券を生徒がもらうことはできませんでした。でも、僕自身久しぶりのボーリングでとても楽しく、最高でした。
焼き肉では、仲の良い友だちと楽しく食事が出来て、たくさん笑いながらたくさん食べて、身も心も満足しました。
温泉では、ゆっくりと体を休めることが出来、とても気持ちよかったです。
2年生合宿がこんなに楽しくてよいのかと思ってしまいましたが、今回しかないと思い、心の底から楽しみまくりました。この合宿で、2年生の仲は深められた気がします。まだ1人も辞めていない光風館45回生なので、このメンバー全員で卒寮したいと思いました。
この機会を与えてくれた、三浦先生、青栁先生に感謝です。
< めぐみ館 >
「敬和キャンプに行って」
T.M(1年生:新潟県十日町市)
私は初めて敬和キャンプに参加しました。キャンプは佐渡に行ったので船に乗って行きました。私は佐渡に行くのは初めてでしたが、幼い頃に一回船に乗った事があるので敬和キャンプで二回目です。ですが、2・3才の頃だったのであまり覚えておらず、船に酔うことが心配でした。しかし、あまり揺れを感じなかったので、楽しく船に乗ることができました。
佐渡教会で5泊6日のキャンプでした。2日目、3日目、4日目は午前中が自習時間、午後は教会の周りの草取りなどの作業をしました。草取りを始めて3日後にはすごくキレイになっていました。2メートルくらいの高さの草があってその向こう側の海が見えなかったものが見えるようになっていました。5日の午後は海に行き、ビーチバレーや海に入って遊びました。海は久しぶりだったので楽しかったです。ご飯は班ごとで協力して作りました。人が作ったのも自分で作ったのも、協力して作ると美味しいなと感じました。
この敬和キャンプで人と協力することは大事だと強く思いました。来年も参加したいです。
寮務教師から一言
夏休みが明けて、太夫浜も少しずつ朝夕が涼しくなってきました。夕方も暗くなる時間が早くなり、もう秋が始まるのだなと感じています。
秋と言えば、読書の秋、スポーツの秋、勉強の秋、食欲の秋、行楽の秋、芸術の秋などいろいろなことをするのに適した季節と言われます。後期が始まりましたが、是非のぞみ寮生には、寮の仲間と勉強はもちろん、みんなでスポーツをしたり、みんなでなにかを作って食べたり、みんなで楽しいことを企画して行ったり、寮でしかできないいろいろな経験をしてほしいと思います。私たち寮の教師ものぞみ寮生と一緒に秋を楽しみたいと思います。
光風館担任 三浦 啓